Rice Crop

企業内英語研修の企画運営・講師をしています。こばれ話を書いていきます。(「人事コンサルの英語研修」www.wilval-hr-support.com)

受験英語からの大脱出

 この本を読んでいます。第3章に

 

<問題は、これまでの日本の学校教育のシステムは、この「短期的な記憶」しか問うてこなかったという点だ。分数は期末試験までできればいい。英単語は大学入試まで覚えていればいい。(略)そこで問われていたのは、おそらく「学力」ではなかった。そこで問われていたのは、「従順さ」と「根性」だった。>(kindle Loc 602, 608)

 

 わたしのクラスの参加者は、大手製造業企業のエンジニアまたは営業担当者です。受験勉強もきちんと取り組んだ人たちで、会話練習のトピックが高校時代の思い出になると、勉強ばかりでいやだったという人が少なからずいます。その人たちのいた世界がここにはっきり描かれていました。

 

 筆者は中学1年生で英語を学校で習い始めたとき、とても幸運でした。1学期は音だけ、耳と口の訓練のみで、先生は日本語を一切つかわず、と言うやり方だったのです。その延長線上には、話すことも含め、英語の使い手となることがきちんと想定されていました。

 

 そうでない線路で走り始めてしまったクラスの参加者たちが、路線を変更するのは容易ではありません。話せるようになってもらうためには、どうしても起動してもらわなくてはいけない部分があり、そこが頑なにoffになっているように感じます。

 

 着任したとき、人事課からのオーダーはシンプルに、「業務に支障のない英語力」でしたが、こんなコメントがついてました。

 

「とにかくみんな忙しいんですよ。でもやらせたら、ここの人はやります。まじめだから。あと、単語ですね。あればっかりはないとどうしようもないから。数決めて、覚えさせてやってください。」

 

 筆者は単語本で覚えたこともないし、そのように指導したこともありませんでした。英語を読んだり聞いたりして、出くわしたものを文脈の中で覚えるのが、当たり前なのです。

 

 ですので困りましたが、クライアントの要請ですから、やりました。単語本を用意し、せめてものと例文の穴埋め問題の形式にして、10~30の単語を毎回提示、次の週に若干順番など変えてテストするようにしました。

 

 確かに次の週はほぼ満点。しかし

 

 1か月後の抜き打ちでは、30%くらいの正解率です。

 

 こんなでしたから、単語を覚える作業は、反論できる実際のデータが出たこの段階でやめました。

 

 英語を学ぶ=短期記憶に放り込む ことでやってきた人は、がんばろうと思えば思うほど、それをやってしまいます。1か月後も覚えてればいいのかというと、yes には違いないですが、1か月後のテストが満点でも、足しになっているか、つまり使えるようになっていってるのかは、疑問なわけです。

 

  「若いときみたいにいきませんなあ。はじから忘れちゃって。」

 

 という方も同じです。かつては覚えた単語でテストの点数は取れたけど、何か表現できましたか、と返したくなるわけです。

 

 業務で不自由を感じないような、話す力、聴く力を身につけてもらうには、英語の勉強・練習そのもののイメージを差し替えてもらわなくてはなりません。

  

「楽器を覚えること、スポーツを練習するのと同じです。」と繰り返し言っても、実感としては何も伝わりません。

 

 かつて、脳のフィールドで言語担当はブローカ野、ウェルニッケ野と勉強しました。単語を記憶していく作業で、そこは活性化しないとも読んだことがあります。

 

 「やってるんですけどねえ。」と言って、伸びない人は、単語を覚えることと、CDを聞き流すことの組み合わせが多い。肝心なところが、onになるきっかけがないのです。

 

 では何をするか。

 

 ひとつは覚え方を変えることです。覚えようとしているその文は、

 

 どういうときに、どういうことを言いたいときに、自分が使うのか、

 

 自分が使うような文でなければ、誰がどんなときに使うのか、

 

 いつも想像しながら覚えていくように、お願いしています。もちろん、声に出して、です。

 

 日本語と英語を対応させていくだけでは、だめなんです。"意味"というのは、もっと広がりがあるものを指すのだと思います。

 

 正解を求めている限り、自分のものにならないわけで。受験英語からの脱皮は、

 

第一に音ありきにすること、

第二は自分の頭の中にある意味の地図と英語を照合させること、

 

です。