スピーキング力を磨く段階的レッスン ー 言語と非言語を並行して
プレゼンが “自然に” “上手に” できるまで、どのようなレッスンをするかご紹介します。
ポイントは、“場馴れ”した感じを、ごく初歩の段階から積み上げていくことです。英語の表現を増やし、自分のものにしていくのと並行して、姿勢・態度も身に着ける、すなわち言語的コミュニケーション力と非言語的コミュニケーション力を分けないで訓練します。
プレゼンはアウトプット、TOEICはインプットのテストなのですが、企業における英語の評価が多くの場合TOEICで行われているので、それに沿って申しあげると、 TOEIC500点、600点の人でも話せない、700点でもたどたどしい、というのが、会社としての悩みだと思います。
「単語が出てこない」という“反省”をよく耳にします。しかし、言葉を発して、何かしらを伝えるのにもっとも必要なのは、単語の暗記ではありません。
Milan・Hondaの英語による記者会見は、最後まで自分の言葉で伝え、すばらしかったです。Hondaのような覚悟のある大選手と比べられたら、誰でも匙を投げたくなるかもしれませんが、覚えておいていただきたいのは単語力ではないということです。
前置きはこれくらいにして、話せないところから、週1回1~2年かけて、質疑応答も含めたプレゼンができるまで、どんなレッスンをしていくかをご紹介します。
段階1:1分間スピーチ(話題自由)
クラスの前に立って、とにかく1分間話します。週末にしたことでも、スポーツの話題でも、もちろん業務のことでもOKです。最初は、「~について話します。」とやっと言えたら1分というくらいですが、だんだん不思議とできるようになります。人前に立つことがすでに壁だったのが、慣れるからかもしれません。
段階2:1分間スピーチ(話題自由)+スピーカーから質問
慣れてきたら、スピーチの途中か最後に、スピーカーからオーディエンスへ、質問するように指示します。「何のことかわかりますか。」「同じような経験がありますか。」などです。プレゼンは往々にして、原稿の素読になる悲喜劇となります。それを回避するために、相手があって話している前提と、聴き手を取り込んで話す習慣を、身にしみつける、その第一歩です。
段階3:1分間スピーチ(話題指定)+オーディエンスから質問
今度は話題の範囲を限定します。時事問題とか、健康とか、技術とか。カードに書いてランダムに配り、全員ちがうものにします。(クラスはたいてい6-7人です。)
そして、今度は聴き手からの質問を募り、さばく練習も始めます。きく方にもこたえる方にも、謝辞や褒め言葉をいれるマナー、文脈のつけ方など、指導します。
段階4:プレゼンテーション with 図表1枚
次にやっとスライドを使います。ただし1枚に限定し、グラフやチャートなど用意してもらい、スライド上の文字は最低限にします。図表を段取りよく説明する英語を練習し、聴衆におしりをむけないとか、ポインターをやたら動かさないとか、所作も訓練します。Q&Aや、始め方、締め方も学びます。
段階5:プレゼンテーション7分間
段階4を丁寧に長くやった方がいいです。その上で、この段階に進んでください。
ここでは業務で使うものを簡潔にまとめて、7分間のプレゼンを練習します。スライドが煩雑であることや、ロジックが乱れていること、焦点が定まっていないことなど、英語以外の弱点もすべて指摘します。英語のクラスでそこまで言われたくないと怒り出した人は、ありがたいことに、いまだかつていません。
メッセージを伝えることがよきプレゼンターの使命ですので、ロジックもしぐさも表情も、言語/非言語そろって伝え手のそれになっていれば、自ずとセリフがいきてきます。
いかがでしょうか。これをこつこつやっていけば、確実に話せるようになるのです。もちろん、その他リーディング、ライティング、リスニングの練習もしていきますので、複合的効果は小さくないのですが、とりあえずスピーキング練習の流れをご紹介しました。
今からやれば、1年か2年経ったときに話せる、10人がやれば10人、50人がやれば50人話せるようになります。やらなければ今のままです。社内の英語力を課題にするようになって、無策のまま何十年も経つ会社は麻痺しているのかもしれません。経済学で「ゾンビ企業」というタームを知りましたが、似ていますね。やらなくちゃと思ったことをやるかやらないか、英語に限ったことではないかもしれません。
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